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最終回は、”Startup of the Year 2016”のソーシャルスタートアップ賞と、オーディエンス賞を紹介します。

 

 

 

ソーシャルスタートアップ賞:UNA

www.unawheel.ru

 

Supreme Motorsが開発した「UNA WHEEL」は、市販の車いす電動車いすに変えてしまう脱着可能型の電動エンジンです。


UNA WHEEL

 

「UNA WHEEL」の総重量は11kgで、車椅子使用者が他の人の手を借りずに、30秒ほどで取り外しできるように設計されています。脱着可能型といっても、非常にパワフルな電動エンジンで3~4hの充電によって、35km走行することが可能です。最大速度は15km/hで、車椅子の重量と合わせて150kgまで牽引できるようになっています。走行可能な傾斜角度も35°まで対応しています。

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価格も70,000Rub(約14万円)とリーズナブルです。日本で電動車いすを購入しようとすれば、大手メーカーのスズキで約30~40万円、 昨年大型の資金調達をした次世代パーソナルモビリティの開発を手がける「WHILL」は99,5万円、アメリカで開発された世界最軽量の電動車椅子「ZINGER」は19,9万円です。

▼スズキ電動車いす価格帯

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jp.techcrunch.com

 

www.zinger-japan.com

 

Supreme Motorsのメンバーは4人です(Nikolay、 Sergei K.、Sergei P.、Igori)。彼らは、2014にこのアイデアを思いつき、モスクワ国立工科大学(MGTU)と共同で約2年の歳月をかけてプロダクトを完成させました。

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www.bmstu.ru

 

現在は、ロシアで最も大きいクラウドファンディングサイトである「Planeta.ru」で、100万Rubをゴールに資金調達をしています。また、昨年からPlaneta.ru、Russian Venture Company(RVC)、EVA Investの三社が共同でハードウェアスタートアップ向けのプロジェクト「Technology Battle」を始めました。ここでもファイナリストに選ばれ、10万RubのプレミアとEVA Investとの1on1ミーティングの機会を獲得しています。

 

▼ロシアNo1のクラウドファンディングサイト「Planeta.ru」

planeta.ru

 

▼ハードウェアスタートアップ向けプログラム「Technology Battle」

promo.planeta.ru

 

ロシア連邦社会政策・労働省によると、ロシアにおける障害者用車いすの利用者は、32万人とされており、2011-2012年には国家予算における障害者への社会保障費として、4,246億Rubが計上されています。一方で、日本においては、H28の手動車椅子出荷台数は48万台(一般財団法人 自転車産業振興協会技術研究所調べ)、H27の自立支援給付金(障害福祉サービス)が9,330億円(参議院 厚生労働委員会調査室調べ)でした。

 

市場規模に関しては、ロシアに比べて、日本の方がやや大きいものの、日本では今後電動車イスは、マイクロEVに代替されるとの見方もあります。一方で、ロシアでは車いす利用者の90%がいわゆる市販の手動車いすを利用しており、「UNA WHEEL」のようなパワフルでデザイン性の高い車いすの利用者が少ない為、潜在需要はあるかもしれません。

 

しかし、ロシアの場合は歩道の整備環境が日本に比べ、圧倒的に劣悪である為、ユースケースを一般公道利用以外にも考える必要があるかもしれません。

 

何れにせよ、「UNA WHEEL」のような製品が出ることで、老人・障害者の生活にさらなる多様性と活力が生まれてくれたらと思います!

 

 

オーディエンス賞:Педиатр 24/7(英:Pediator24/7)

pediatr247.ru

 

「Pediator24/7」は、Mobile Medical Technology社が提供している小児用の遠隔医療のサービスです。24h365日、インターネット上で小児科医からのアドバイスを受けることができます。提携医療機関が24h体制で、対応してくれるようになっています。

 

ユーザーはまず、[当直医にすぐに相談]か[専門家への相談を予約]を選択します。

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[当直医にすぐに相談]の場合は一回800Rubです。

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[専門家への相談を予約]する場合には、カレンダーから日時を指定します。また、料金は専門家によって異なります。

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アドバイスは、PCブラウザ、モバイルappのどちらからでも受けることができます。また、インターネット通信の状態が悪ければ、担当医から電話を受けることもできます。

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「Pediator24/7」は小児科医に特化したサービスですが、同社が提供する「Online Doctor」は医療分野を限定しない類似の遠隔医療サービスです。

onlinedoctor.ru

 

「Pediator24/7」の創業者でもあるAleksandr Smbatyanはシリアルアントレプレナーです。他に、インターネットショッピングサイトの「Aizel.Ru」、ショッピングクレジットの「vkredit24.ru」、ファッション系メディアの「Buro24/7」を創業しており、また、医療系サービスを投資先にもつVCのGenome Venturesの創業者でもあります。

Genome Ventures

「Pediator24/7」もGenome Venturesから出資を受けています。

 

「Pediator24/7」の創業は2013年です。子供の成長に関する母親たちの相談をすでに12,000件以上受けています。その相談のほとんどが、「子供に何を食べさせるべきか」というもので、相談の85%はモスクワ、サンクトペテルブルクを除くロシアの地方都市からのものだそうです。

 

「Pediator24/7」は今後、障害者児童向けの医療サービス展開と、人工知能を活用したBotによる遠隔診療の開発を行っていく予定です。

 

 

ヘルスケア分野に特化したVCのRock Health社のリサーチによると、2016年のロシアにおける*eHealthサービス市場は昨年対比+19%の成長をみせています。ロシアのプーチン大統領も今後2年間で、全ての医療機関をインターネットで接続し、遠隔医療に力を入れていくと発言しています。4,000人のロシア人を対象にしたアンケートでは、実に回答者の40%以上がすでに何らかの形でeHealthサービスを利用したことがあるとわかりました。

*情報通信技術を積極的に医療に導入することで個人の健康を高める仕組み。

rockhealth.com

 

市場の拡大に伴い、プレイヤーも多様化しています。「Pediator24/7」や「Online Doctor」以外の遠隔医療プレイヤーとしては、以下の企業が挙げられます。

▼「ONDOC」
個人の医療データを集約し、診察や処方に役立てる

ondoc.me

 

▼「Welltory」
個人の健康に関するアドバイスがもらえるモバイルapp

welltory.com

 

▼「Doctor at Work」
医者の為のネットワークサイト

www.doktornarabote.ru

 

▼「Helfine Medical」
ドイツ人の医師からセカンドオピニオンがもらえる

www.helfine.ru

 

 ロシアでは2015年から遠隔医療についての議論が活発化してきています。その発端となったのは、ロシア連邦保健・社会発展省と「IIDF(Internet Initiative Development Fond )」、「IID(Institute of Internet Development)」、Yandexの三社が遠隔治療に対して異なる意見をぶつからせた事でした。ロシア連邦保健省は、遠隔治療はあくまでも、相談やアドバイス、経過観察などの領域にとどまると主張しましたが、民間三社は遠隔治療は診断や薬剤処方も含む定義であると反論しました。

 

日本における遠隔医療については、2015年の政府の方針転換を機に、一気に規制緩和の流れとなっています。

www.nikkei.com

 

ただ、ロシアの実際の医療現場においては、医師が患者から直接メッセンジャーアプリなどで相談受けるようないわゆる「黒い医療行為」が数年前から頻繁に行われており、患者を守るという意味でも、早急な法整備が求められています。

 

また、ロシアにおける遠隔医療のニーズの高まりの裏には、ロシアならではの医療従事者の賃金の安さも関係しているかもしれません。本来であれば、国民の生活を支える社会インフラに携わる者として、しかるべき待遇が守られていない現状があります。
下の図では、ロシアの医師の平均賃金は25,000Rubであり、ドイツの約1/10、アメリカの1/17の給料しかもらえていません。

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Startup of the Year 2016はいかがでしたでしょうか。今年は医療や建築など、既存の業界に最新のインターネットテクノロジーが導入され、新しい価値を生み出すスタートアップの姿がみられました。今後もこういった流れは加速していく事でしょう。

 

最後に、受賞チーム以外でも、フィナリストはスポンサーからのプレミアを受けるチャンスがあります。今年のプレミアはカシペルスキー研究所とMicrosoftが提供しました。
カシペルスキー研究所はビッグデータ解析のスタートアップ「Tusk Pro」に賞状を、MicrosoftMicrosoft Bizparkで使える12万USD相当のプレミアを、マイクロファイナンス向け信用調査サービスの「Scorista」にプレゼントしました。

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参考記事→

vc.ru

 

Денис Юдчиц, «Педиатр 24/7»: Мы решили сделать сервис для мам, который доступен круглые суткиmhealthrussian.wordpress.com

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