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(写真:TASS通信)

いまロシアでは、「ごみ問題」が深刻な社会問題となっている。

広大な国土をもつロシアでは、ごみを分別する文化がなく、ごみの約9割を埋め立てに頼ってきたからだ。

 

しかし、それと同時にロシアでは、そんなごみの処理問題を解決しようとするWastetechや、ごみの削減やリサイクルなど環境に配慮したユニークなCleantech、Greentech関連のスタートアップが増えてきている。

 

今回はロシアのごみ問題とそれらスタートアップについて解説していきたい。

≪目次≫

1. 深刻さを増すロシアのごみ問題とは?
 ⅰ.  ロシアのごみ処理事情
 ⅱ.  埋め立て地近隣住民の不満の声
 ⅲ. 国の対策
  ・国の主な対策
  ・分別収集、リサイクルの動きも
  ・ロシア国民の理解・協力も必要
  ・日本のごみ処理産業にも高い評価
2. Wastetech・Cleantech・Greentechとロシアスタートアップ
 ⅰ.   Ubirator (Убиратор)
 ⅱ.  Sborbox

 ⅲ. Wasteout
 ⅳ. GEOVITA
 ⅴ.  Nyam Cup
3. まとめ

1

深刻さを増すロシアのごみ問題とは?

ロシアのごみ処理事情

まず、ロシアではどのようにごみが捨てられ処理されているのだろうか?

ロシアでは、そもそも分別の習慣がない生ごみや紙、プラスチック、瓶もペットボトルもすべて一緒のごみ箱に捨ててしまうのが普通である。

 

そして、ごみのほとんどが埋め立てによって処理されている。JETROの記事によると、国内の一般廃棄物(都市ごみ)の年間排出量7,000万トン以上のうち、処理割合はわずか1割程度で(表1参照)、残りの約9割が埋め立て処分されているという。

一般廃棄物の搬出量(単位:百万立方メートル)
うち処理量(単位:百万立方メートル)
割合(%)
2010 235.4 32.1 13.6
2011 241.1 24.3 10.1
2012 255.8 26.9 10.5
2013 260.9 24.6 9.4
2014 262.8 21.3 8.1
2015 266.5 20.8 7.8
2016 268.8 23.9 8.9
2017 274.4 27.9 10.2

表1:ロシアの一般廃棄物

(出典:天然資源・環境省、国家統計局(ロシア

それを可能にしてきたのは、広大な国土に散らばる膨大な数の埋め立て地である。それらは合わせると4万平方キロメートルを超え、スイス一国の面積にも相当する。

だが各地の処分場は飽和状態。違法埋め立て地の増加が問題となっており、2016年時点では違法埋め立て地の数が合法処分場の20倍になるとも言われた。

埋め立て地近隣住民の不満の声

このようなごみの埋め立ては国民にも大きな被害を及ぼしている。

 

モスクワ近郊のモスクワ州ボロコラムスク地区では、2018年春に、埋め立て場から発生する悪臭などが原因で、周辺に住む多数の児童が体調不良を訴えたことをきっかけに、大規模な住民抗議運動が起きた。

 

モスクワ近郊では埋め立て地の問題が特に深刻で、ボロコラムスク地区以外でも類似した抗議行動がいくつか起きている。

 

住民は、埋め立て場の拡張や搬入ごみの増加を認可した都市ごみ取り扱い業者や国・自治体の対応などに不信感を募らせている。

埋め立て場の閉鎖を求めるボロコラムスク地区の人々

(写真:BBC)

国の対策
国の主な対策

もちろん、連邦政府は国家発展目標の一つとしてごみ問題の解決を目指している。

 

2018年、4期目の政権をスタートさせたプーチン大統領は、今後6年間の政策的な指針を示す中で、13の優先的な政策分野を指定し、それぞれについての「ナショナルプロジェクト」を発表したが、その中の一つに「環境(Ecology)」がある。

これは11の事業から構成されるが、そのうちの一つ「きれいな国(Clean Country)」では、2024年までに、全国の都市居住区にある191か所の違法埋め立て地の閉鎖や、都市ごみの処理率を大幅に引き上げる目標を立てている。

 

また、ロシアでは2019年1月から一部地域などの猶予措置を除き、新たな都市ごみ処理制度の適用が始まっている。通称「ごみ改革」と言われるこの新制度では、各地域で任命された地域事業者がごみの回収から全ての処理工程を実施することになっている。

 

しかし、準備が整わず全面実施が過去2回延期されていることや、2度目の延期の際にとられた猶予措置では、一部地域の違法埋め立て地を2022年末まで実質的に認めていることなど、なかなか大きな進展が見られない状況でもあり、国内では批判の声も多く上がっている。政府には国民が納得できる制度の確立が求められている。

分別収集、リサイクルの動きも

だが、部分的には進展も見られる。

 

新制度では、これまでほぼ行われてこなかったごみの分別収集も促進しており、分別収集を試験的に導入する自治体が少しずつ見られ始めている。

 

モスクワ市でもついに、2020年1月1日からごみの分別収集が義務付けられ、リサイクル可能なごみ(プラスチック、ガラス、アルミ缶などの金属、紙類、段ボール)と、リサイクルできないごみで分別回収が行われ始めている。

ロシア国民の理解・協力も必要

しかし、このような分別廃棄の実現には国民自らの理解・協力もかかせない。

 

プーチン大統領も2018年の記者会見で、「わが国ではソ連時代から数十年にわたり、ごみを分別する習慣がなかった」と、分別意識の低さを認めた上で、ごみ処理産業を一から築き上げる必要性を強調している。

日本のごみ処理産業にも高い評価

またロシア政府は廃棄物処理産業を発展させるため、日本を含む外国企業との提携も模索している。例えば、2019年夏には、世界に約1000に及ぶごみ焼却発電プラントを納入している日立造船が、ロシア(モスクワ)で初めてごみ焼却発電プラントを受注した。

 

プーチン大統領も2024年までに国内で200カ所の処理施設を建設するという数値目標を挙げるなか、中でも大都市でのごみ焼却場の好例として東京都内の施設を引用し、(住環境悪化へのイメージを理由に)焼却場の建設に反対しているロシア国民に理解を求めた。

2.

Wastetech・Cleantech・Greentechとロシアスタートアップ

このように、ロシアのごみ問題はいまだ解決の道をたどっている途中だと言えるが、この問題を少しでも解決するために、また私たちの未来や地球のために、ロシアではどんなスタートアップが活動を行っているのだろうか?

 

Ubirator(露:Убиратор)

設立者の1人・Nikita Nikishkin氏はモスクワ物理工科大学出身の23歳

(写真:Vedomosti

Ubiratorは、主に食料品店やレストラン、オフィスビルなど店や企業向けに、リサイクル可能なごみ(紙類、ダンボール、ペットボトルなど)の回収と処理施設までの運搬をリーズナブルに行っている。

このサービスはYandexやUberと同じようなシステムで、顧客はアプリなどのオンラインプラットフォームからいつでも回収・運搬を行ってくれるドライバーを見つけることが可能だ。

 

Ubiratorは2018年に設立。2019年8月の時点で、ロシアの人気高品質スーパー「フクースビル」などを含む約700の顧客をもつ。

 

この他に、建築ごみの収集・運搬や除雪のサービスも行っている。

Sborbox

(写真:Softonic

こちらも、上のUbiratorのようなリサイクル可能なごみの回収・運搬サービスであるが、Sborboxはお店などに向けたものではなく、一般の住民向けに無料で回収を行い、それを処理施設まで運んでくれるアプリを使ったITサービスだ。

 

このサービスは主に、(ロシアでは都市の住居として一般的な)アパートや集合団地のなかで機能する。

まず住民は、リサイクル可能なごみを一つの袋にまとめ、それを各々がアパートの階段などに置いておき、アプリで袋の場所を知らせておく。収集役として主にアパートの管理人がそれらを集め、ごみを種類別に分類。(これにより管理人は20,000ルーブル/月まで稼ぐことができる)その後、車で回収され処理施設まで運ばれるという。

 

個人でも分別廃棄を手軽に行えることができ、またアパート内で近隣に住む人々も巻き込んでより多くの人々で行うことで、人々の意識アップにもつながるのではないだろうか。

 

現在30,000人以上がこのアプリを利用しているという。

Wasteout

ごみ箱コンテナに取り付けられたWasteoutの小さな緑色のスマートセンサーが、コンテナのごみの蓄積情報を把握し、ごみ収集を行うドライバーにオンラインで知らせてくれるというシステム。これにより、ごみ収集会社の効率化や収益をアップさせたり、住民や街にとってはごみの溢れや悪臭、ネズミなどの被害を防ぐことができる。

 

ロシアでは、このようなごみのスマート収集サービスは他にも数社が取り組んでいる。

 

またロシア大手通信会社MTSも、沿ボルガ地域にあるサマラ州と締結したデジタル経済化に向けた協力協定の枠内で、サマラ州向けの特別なごみのスマート収集サービスシステムの導入を発表した。

GEOVITA

環境にもヒトにも優しい、ユニークでエコな使い捨ての食器や容器、カトラリーなどの製造を行っている。

GEOVITAの製品は、サトウキビ、紙、コーンスターチ、ヤシの葉、小麦わらから作られており、食品を長い間新鮮な状態で保存できるうえ、そのまま温めたり凍らしたりしても有害な物質は出ない安全なものとなっている。

 

最近はロシアでもフードデリバリーサービスがかなり主流なものとなってきているため、このような環境に優しい使い捨て容器は、ごみ問題の解決にかなり貢献してくれるのではないだろうか。

Nyam Cup

Nyam Cupは、クッキーからできた、まるでデザートのような、かつエコな食べられるコーヒーカップの製造と販売を行っている。

 

カップには100℃までのホットドリンクなら2時間まで入れることができる。中にチョコのコーティングがされているものや、そのお店のロゴマークをいれたものなど、味やデザイン、サイズも様々なものがある。すでにロシアとCIS諸国にある200以上のコーヒースタンドやカフェ、レストランなどで販売されている。

 

先日11月末に行われた、サンクトペテルブルク市が運営するテクノパーク主催のビジネスカンファレンス「RUSH forum」では、SAMIもテクノパークのスタートアップ向けのメンターという立場から、日本進出という観点でNyam Cupを選ばせていただき、サーティフィケーションと日本進出にかかるコンサルテーション権利をプレゼントした。

このほかにも、ロシアにはさまざまなWastetech・Cleantech・Greentech関連のスタートアップが存在している。ぜひここからCheckしてみてほしい。

参考URL:https://rb.ru/greentech/

このように、いまロシアではごみ問題がかなり深刻なものではあるが、その半面、それを解決しようとする優秀なスタートアップや、環境に配慮したスタートアップは増加傾向にある。

 

この分野のロシアのスタートアップが、国内にとどまらず、世界全体の環境問題を解決するような存在になっていくことも今後期待したい。

執筆:長島さくら)

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