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今回は、ロシアにおけるフィンテックと、フィンテック発展の根底にある国家のデジタル経済戦略についてご紹介します。

そもそもフィンテックとは、金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせた造語であり、金融サービスに積極的にITを取り入れようとする動きのことを指します。近年では日本でもフィンテックという用語がよく聞かれますし、日本銀行は2016年にFintechセンターを設置しています。

本記事では、ロシアにおけるフィンテックの概要を明らかにするほか、ロシアで注目されているフィンテックスタートアップについて見ていきましょう。

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①ロシアにおける「デジタル経済」と銀行

⑴国家プロジェクト「デジタル経済」

そもそもロシア経済が石油やガスなどの天然資源の産出に依存した構造となっていることは明らかですが、この状況を打開し柱となる新たな自国産業を創出するために、ロシア政府は現在積極的にイノベーション戦略を進めています。このイノベーション戦略のうちの1つとして「デジタル経済」という概念が存在していると言うことができます。

また、ロシアにおけるデジタル経済は、世界的なデジタル経済指向および隣国中国のデジタル経済戦略への対応という意味合いを含んでいるとする見方をすることもできます。2018年のG20サミットにおけるサミット共同宣言では、デジタル経済をめぐる世界的な合意がなされています。そして、例えばAlibabaなどの中国企業は、ロシアにおけるデジタル経済市場へも影響を及ぼしつつあります。(ロシア市場における、ロシア企業との合弁会社設立など。)

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ロシア国家の経済デジタル化に対する取り組みは、2000年代からみられますが、「デジタル経済」という用語が初めて用いられたのは2017年です。2017年には、プーチン大統領の要請で「デジタル経済2024」のプログラムが準備されたほか、7月27日付政府決定で「ロシア連邦デジタル経済」という国家プロジェクトが承認されます。現在政府によって進められているのは、情報インフラの整備が主であり、生体認証システム、フィルタリングシステムの導入、アンチウイルスソフトの普及などが例として挙げられます。

⑵ロシア銀行のデジタル経済・フィンテックへのアプローチ

ロシアの銀行は、国家レベルのプロジェクトへの協力、民間企業との共同のプロジェクトへの参画など、経済のデジタル化およびフィンテック発展への取り組みには積極的であると言えます。

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デジタル経済の構想は政府、戦略イニシアティブ庁、ロステレコム、Rostec、MTS、メガフォン、ヴィンペンコム、ヤンデックスなどに加え、ロシア最大手の銀行であるズベルバンクが参加して策定されたものです。その後、2018年9月の戦略発展・国家プロジェクト会議で国家プロジェクト「デジタル経済」の詳細案が承認されました。

民間企業との関係の中で見ていくと、ロシアのデジタル経済化に対応すべく、IT最大手のヤンデックスとズベルバンクは合弁会社設立で合意し、2018年秋にマーケットプレイス(ネットショッピングサイト)の「ベルー」を開始したことが大きな動きのひとつです。また、2018年11月に、ズベルバンクのモバイルサービスであるズベルモバイルがロシア14の地域で利用できるようになったほか、ズベルバンクば中間管理職の70%をAIへ移行すべく、大規模なリストラを行いました。さらに、2018年の12月には、VTBバンク、Russian Standard Bank、Tinkoff Bank、Home Credit & Finance Banの4銀行が、VISAカードの電話番号のみを使用した決済を導入しているほか、ズベルバンクとMastercardが、クレジットカードのタッチ決済をスマートフォンで受けるアプリを開発しました。また、同じく12月にTinkoff銀行は、自動車販売のAuto.ruと共同で中古車の遠隔取引を開始すると発表しています。

②ロシアにおけるフィンテック

⑴ロシアフィンテック協会

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https://fintechru.org/

ロシアフィンテック協会とは、ロシアの金融市場の発展を実現させるための新しい技術ソリューションの開発と導入、ロシア経済のデジタル化のための条件作りを目標として2016年に設立された組織です。ロシアにおけるフィンテック系イベントのオーガナイズに携わっているほか、国際トレンドの研究・分析、法律改正への提言など、ロシアのフィンテック業界発展のための指標を示す役割を担っていると言えます。

⑵協会の定める課題とゴール

 協会はフィンテック業界が取り組む課題・達成すべき目標として以下を掲げています。

 ❶デジタル経済の中での顧客の個人識別とマネジメント

 ❷ブロックチェーンによる金融システムの分散化

 ❸個人の支払い空間のデジタル化

 ➍API開放の促進

❶は、個人データの効率の良いデジタル化を推進してゆくということです。生体認証を用いた個人識別、デジタルIDの作成と管理、法的重要文書の電子管理、身分証明書に基づいた電子署名などが具体例としてあげられています。

❸について、協会は、個人の支払いのためのプラットフォームの分析および開発、ビジネスモデルの提案、法律改正への提言を協会側は進めてゆく予定です。 

  

 

③優秀フィンテックスタートアップ

では次に、ロシアの優良なフィンテック系スタートアップの例を見ていきましょう。

ここでは、ロシア最大のフィンテックフォーラムの一つである「FINOPOLIS2018」のスタートアップコンテストにおいて優秀賞に選ばれた4つのスタートアップを紹介します。

⑴Q Platform

ロシアおよびその他CIS諸国においてウェブ決済サービスを展開する巨大企業「QIWI」によるスタートアップ。

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https://platform.qiwi.com/

オープンAPIに基づいた金融インフラと金融サービスへのアクセスプラットフォームの開発を行っており、提供しているサービスは、「銀行を対象としたファイナンシャルサービス」と「ビジネスを対象としたウェブインフラ」の2つに大きく分けることができます。前者は、最短時間で銀行プラットフォームへのアクセスおよびその分析を可能にする「QIWIプラットフォーム」を用いて、市場調査、パイプライン設計、ビジネス統合を支援するというもの。これは、デジタル経済への移行に既存の銀行が対応するための新しいアーキテクチャの構築において重要な役割を果たすことが期待できるといえます。

⑵Seeneco

B to Bのための取引プラットフォームの開発を行うスタートアップ。2013年設立で、現在では25000以上の企業をクライアントとして抱えています。

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https://seeneco.com/

企業間取引における、即時オンラインキャッシュ明細書の発行やネットバンキングで の決済をより迅速に行うことを可能とするプラットフォームを提供しています。このプラットフォームはズベルバンク、アルファバンク、チニコフフバンク、バンクトーチカ(企業向けバンク)、モジューリバンクなどの主要銀行を介したネットバンキングに対応しています。

決済の「スピード」、煩雑な手続きの「簡略化」の2点が強み。

⑶Qrooto

Qrootoは、消費者に買い物におけるキャッシュバックサービスを提供するモバイルアプリケーション。

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https://qrooto.ru/

買い物をした際のレシートをアプリに登録することで、買い物金額に応じてキャッシュバックを受け取ることができます。キャッシュバックはメーカー自身から賄われています。

具体的な仕組みは、アプリに登録された購入情報を、Qrootoチームがプラットフォーム上で処理・分析し、購入場所・性別・年齢・小売価格・競合他社の販売・関連製品・消費習慣といった購入者情報をメーカーに提供することで、メーカーからGrootoにサービス料が支払われます。さらに、メーカー側が「プレミアム」に指定した商品を購入すると、消費者はより多くのキャッシュバックを受けることができるシステムとなっており、メーカー側には消費者の購買意欲を高めることができるというメリットがあります。つまり、メーカー側は効率よくマーケティング予算を削減することができるのです。

それだけでなく、Qrootoは市場調査を行い、そのレポートをメーカー側へ提供します。

⑷Craft Talk

Craft Talk人工知能(AI)をベースとする、クライアント通信プラットフォームを提供しています。ロボットAIを活用した対話型チャットボットが、販売オペレーターとしてクライアントとのやり取りを行うほか、カスタマーサポートも行うことができます。AIアシスタントが、データベースに基づいて自動的に24時間いつでもすぐに必要な情報を提案します。データベースは1か所に蓄積される構造となっており、従業員およびオペレーター、チャットボットがそこにアクセスすることができます。

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https://www.craft-talk.com/

現在、ポーチタバンクやミール銀行などの有名銀行もクライアントとして抱えています。

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いかがでしたか?

ロシアにおけるフィンテックは、米国や中国と比較すると一見目立った動きはないように思われているかもしれません。しかし、ロシア政府がデジタル経済化の国際潮流に対応すべく様々なプロジェクトを策定している動きに合わせ、ロシア国内の銀行および民間企業が経済のデジタル化に対して積極的に取り組んでいるのが見受けられます。また、ロシアフィンテック協会のイニシアティブのもと、フィンテックが発展しやすい土壌作りがなされ、ロシア国内で様々なフィンテック関連のイベントが開催されているほか、優秀なフィンテックスタートアップも多く誕生しています。

今後も急速に発展していくであろうロシアフィンテック市場からは目が離せません。

(執筆・編集:田中 真奈美)

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