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2016年11月にロシアで「LinkedIn」が使用停止になった報道は、日本でも驚きを持って迎えられたと思います。

 

それが今度は、「Line」も使用禁止になるというニュースが出ました!!!

≪目次≫

1. ロシアで「Line」が使えない?

2. 検閲と戦う「RosKomSvoboda」

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ロシアで「Line」が使えない?

ロシアの通信規制当局(Roskomnadzor)の発表によると、メッセンジャーappの「Line」 、「BlackBerry Messenger」、「Imo.im」、ビデオチャットの「Vchat」が今回は対象です。規制理由は、上記の4サービスが、「情報発信者としての登録を拒否した為」となっています。

 

ロシアの通信規制当局Roskomnadzor
https://rkn.gov.ru/

そもそも、なぜロシアはこれらのSNSメッセンジャーappを使用停止にするのでしょうか。事の発端は、2014年に制定された連邦法第242-FZ号「情報・電子通信ネットワークにおける個人情報の処理手続きの適正化に関する一部のロシア連邦法の改正について」で、従来の個人情報の取り扱いについて、法改正された事がきっかけです。

 

個人情報の国内管理規制

企業等が取得した個人データをロシア国内にあるサーバーで保管し処理すること(データローカライゼーション)を義務付ける法律(2014年7月21日付連邦法第242-FZ号「情報・電子通信ネットワークにおける個人情報の処理手続きの適正化に関する一部のロシア連邦法の改正について」)は、ロシア個人情報保護法を含む3つの連邦法の改正法として、2015年9月1日に施行された。同改正法では、ロシア国内の事業者(外資系企業の現法、支店および駐在員事務所を含む)および海外の事業者であっても、ロシア国内向けのウェブサイトを通じて個人情報を収集する者(オペレーター)は、ロシア国民の個人情報をロシア国内で保存、管理しなければならない。また、オペレーターは、個人情報(ロシア国民のものであるか否かを問わない)を処理するサーバーの場所を含む通知を通信・情報技術・マスコミ監督庁(Roskomnadzor)に提出しなければならない場合もある。

出典:JETRO外資に関する規制」

ロシアの通信規制当局(Roskomnadzor)のサイトでは、ドメイン、URL、IPアドレスのいずれかを入力する事で、サイトへのアクセス制限を見る事ができます。

▼検索結果:「linkedin.com」
「LinkedIn」はモスクワ地方裁判所の決定により、条文15.5が適用されている。条文15.5は「個人情報に関する権利侵害」。

スクリーンショット

▼検索結果:「line.me」
「Line」の場合は「Roskomnadzor」によって法が適用されています。条文15.4は「インターネット上の”情報拡散事業者”登録」。

スクリーンショット

「Roskomnadzor」によると、「情報拡散事業者」の定義は1日に300,000人以上のユーザーからアクセスを受けるサイトを指します。そして、「情報拡散事業者」は連邦政府の有するレジストリに登録しなければいけません。これは、「Roskomnadzor」のサイトから自身で行うこともできます。今回、「Line」が利用停止にあったのは、この登録を拒んだ為ということになります。「LinkedIn」がロシア国内で利用できないのとは、少し事情が異なります。

この「情報拡散事業者」レジストリには、ロシア初のグローバル出会い系サイト「Badoo」や、「Yandex」「Mail.ru」「VKontakte」「Rambler」のようなロシアIT企業の雄、そしてIT系メディア「habrahabr(露:Хабрахабр)」「Roem」なども登録しています。

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検閲と戦う「RosKomSvoboda」

禁止サイトや「情報拡散事業者」登録は、「RosKomSvoboda」のサイトから見る事ができます。

 

▼「RosKomSvoboda」

rublacklist.net

「RosKomSvoboda」は2012年に連邦政府による禁止サイトの一括管理(「サイトブラックリスト」)が決まってから、創立された民間機関です。規制当局である「Roskomnadzor」への対立機関として、その名前が付けられました(ロシア情報通信の”自由”の意)。現在は、個人情報にかかる権利保護と、不当にブロックされたサイトのオーナーの擁護活動を旗印に、IT業界に関わる法制定・規制制度のモニタリングと、サイトブロックへの反対活動を行なっています。また、各種統計や分析も見る事ができます。

▼ブロックサイトの摘発機関別割合
統計からは、摘発機関のうち、全体の35.8%を裁判所(青部分 露:Суд)、31.6%を税務庁(緑部分 露:ФНС)が占めている。「Roskomnadzor」は全体の9.9%に過ぎない。 

 

グラフ

出典:「RosKomSvoboda」

また、ロシアにおけるインターネット検閲の歴史も振り返る事ができます。

日本ではロシアにおける外資のITサービスが利用停止のニュースは、ロシア対外資の文脈で報道される事が多いですが、それよりもロシア国内における検閲問題や報道規制などの、「表現の自由」「国家の個人情報管理」の問題が外資のITサービスにも影響を及ぼしていると捉える方が自然のように思います。 

ロシア国内のIT企業は2014年の改正法制定に合わせ、大手企業も着実にレジストリ登録に取り組みました。また、Googleを始めとする大手の外資系IT企業も、2015年の改正法施行後、ロシアのサーバーにデータを移転する発表をしました。

出典:ロシアNOW

また、ロシアにおけるITパークもクラウドサーバーのサービス利用を推奨しており、2015年の改正法施行前の時点ですでに5,000社の申し込みを受けていると発表しています。

国内外の大手IT企業はロシア政府の法改正に反対しながらも、柔軟に対応しており、今のところサービス停止になっているのは数社程度です。「LinkedIn」もMicrosoftを通して、当局側とコンタクトをとり、サービス復活を検討しているとも言われています。

とはいえ、外資系のIT企業にとっては、データ移転に関するコスト増は避けられません。

主にサーバおよびストレージ・システムの購入、エンジニアリング・サービス、またデータ保護設備、通信チャネル設備、ソフトウェア・ライセンスの購入などの費用だ。ロステレコムと契約を結んだグーグルの場合、自社サーバ用スペースの賃貸契約額が月10万8000ルーブル(約20万2000円)である。このような大手企業は、数百台から数千台のサーバを必要とするという。

出典:ロシアNOW

また、昨年外資のIT企業が提供するWeb上のコンテンツ(オンラインゲーム、音楽、データベース、CRM、検索サービス、ホスティング電子書籍、動画、画像)に関しても、付加価値税を課税するという法律が制定され、Google付加価値税の18%分を上乗せするという文面をクライアントに送っていた事がわかりました。

上記のブロックサイトの摘発機関において、全体の30%が税務庁である事からも、今後は税制面でも外資のIT企業に関しては、規制が強まっていく事が想定されます。 

今までのロシアにおけるインターネット検閲と外資規制の歴史と現状を鑑みると、今回の「Line」の一件は、単にサイトがブロックされたのではなく、ロシアは「Whatspp」「Viber」の利用者が多く、またVKの創設者であるPavel Durovが開発した「Telegram」の利用も広まりつつある中で、サーバー移転費用や今後の課税問題と、市場における競争環境からビジネスジャッジとして、「Line」がレジストリ登録を拒否したのかもしれません。

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